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episode46 「あなたを呼んでいたのよ」

Author: 小鳥遊梓
last update publish date: 2026-10-07 18:00:32

 あれからしばらくロラのお喋りが続いた。

 その最中で長鎗の彼女は眠ってしまったが、私としては未だ頭の芯まで覚めきっていて、眠りの気配は欠片もない。少しするとロラ自身も眠ってしまい、仕方なく私も少しだけ眠りにつくことにした。

 少しして起きると、二人が起きるまで出来るだけ時間を稼ぐように毛布に包まりぼんやりと過ごす。窓から差し込む光から察するに、まだ旭が昇ってすぐという頃。

 監視する対象である私を差し置いて、長鎗の彼女はまだ眠っている。

 嘘はついていない。

 少なくとも、彼女は本当にそう思ったということだ。でなければ、こう無防備に眠りはしないだろう。そしてそう至ったのは、あの不思議な瞳の力によるものと暫定せざるを得ない。

 嘘か真かを見極める魔法。

 そう仮定する。

 なら何故初めから行使しなかったのだろう。考えられる理由としては発動できる条件があるか、或いはその力を秘密にしているかといったところか。後者の場合、少なくともロラがいる場で聞く話ではないだろう。

 まだ二人とも起きそうにない
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     あれからしばらくロラのお喋りが続いた。 その最中で長鎗の彼女は眠ってしまったが、私としては未だ頭の芯まで覚めきっていて、眠りの気配は欠片もない。少しするとロラ自身も眠ってしまい、仕方なく私も少しだけ眠りにつくことにした。 少しして起きると、二人が起きるまで出来るだけ時間を稼ぐように毛布に包まりぼんやりと過ごす。窓から差し込む光から察するに、まだ旭が昇ってすぐという頃。 監視する対象である私を差し置いて、長鎗の彼女はまだ眠っている。 嘘はついていない。 少なくとも、彼女は本当にそう思ったということだ。でなければ、こう無防備に眠りはしないだろう。そしてそう至ったのは、あの不思議な瞳の力によるものと暫定せざるを得ない。 嘘か真かを見極める魔法。 そう仮定する。 なら何故初めから行使しなかったのだろう。考えられる理由としては発動できる条件があるか、或いはその力を秘密にしているかといったところか。後者の場合、少なくともロラがいる場で聞く話ではないだろう。 まだ二人とも起きそうにない。 何をすることも出来ず、首元のフリルを撫でたり毛布を握り締めたりして時間を潰す。そうしていると、どこからかそよ風めいて歌が聞こえてきた。 こんな早朝に? 唐突すぎて事が呑み込めない。はっきりと村全体に響き渡るような声は間違えなく、歌うたいのそれだ。 ただ単調に「るるる」という言葉を律動的に繰り返している。それなのに、ただそれだけで一つの芸術として昇華している。しかし今は昼時ではない。歌うたいは正午になるとヤグラで歌う役目を担っているが、いまは早朝だ。 それに警戒態勢である。日中畑仕事に行く村人に自警団が付いていく様子から、警戒態勢と知らされていないとは言い難い。 だが彼女はいま歌っている。 それになんの意味があるのだろう。 あんな、狙撃してくれと言わんばかりの高台で。 夜盗に狙撃手がいるかは分からないが、それなら投擲武器を使えばいい。その危険性を度外視してでも、彼女は歌っている。 分からない。 分からないが、どうしてだろう。 私はあの場所に行

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     ロラはまだ少し作業が残っているということらしく、長鎗の彼女、私という順で入浴した。その際、声の聞こえる位置に待機し、声を掛けられれば反応するという体制にした。私とロラを一対一にしないための対応である。 ロラと二人になったからと言って特に何をするという気はないのだが、まあ念のためだ。 そうして、長鎗の彼女と私はロラが二階に上がって来るまでの間、二人して毛布に包まって待つことになった。どのみち監視されているのだ、眠る時間はあまりないだろうと予想出来る。眠れないのには慣れている、平気だ。 それよりも、入浴した後に着ろとばかりに置いてあった寝間着の方が私には慣れない。白い、首元にフリルの付いた洒落た寝間着。ワンピースであることも気になる。いざというときに動きづらいからだ。 武装は下の階に全て置いてきている。この夜、私は完全に無防備だ。仮に今夜に夜盗が攻めてきた場合、戦力にとして参加するのは難しいだろう。 ずっと、霧深い森の中にいるようだった。今まで防具なしに戦闘したことなどいくらでもあったはずなのに、今夜はやけに心細い。じっと、私を見据えるような長鎗の彼女の眼がそれを助長させている。「眠れませんか」 ふいに、長鎗の彼女が話しかける。 心の内を覗かれたように。「はい。手元に装備もなく眠ることが心もとないのです」「それは不安、ということでしょうか」「分かりません。ただ、それだけが私を護ってくれたものですから」 なるほど。そう呟いて、長鎗の彼女は黙ってしまった。ただ視線を宙に泳がしているその眼は、何か考えているように見える。どうだっていいのだ、私のことなど。ただ、今は監視しているのだから装備は返せない。そう返答してくれれば。それで、私は納得するのだから。 しかし彼女はしばらく中空を眺めたあと、やがておもむろに口を開いた。「ずっと独りだったのですね、きっと」 やめてほしい。「知っていますよ、白髪の歴史。だから目に見えて護ってくれる装備が恋しいのですか」 答えない。 ただ私は、私を理解したようなその言葉をやめてほしい。そういう言葉は

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    「きーしーさーまー!」 扉を開けた途端、そんな大声が辺りいっぱいに炸裂した。なんとなく予感はしていたが、店主ほどではないにしろ予想以上のロラの声。そしてその後ろで、長鎗の彼女が結んだままの唇にかすかに笑みを浮かべている。「ロラ、もう夜も遅いので」 その言葉に一瞬、擦り傷を触られたように顔をしかめる。しかしすぐに唇を尖らせて拗ねたような表情を浮かべると、突然私の腕を掴み家の中に引きずり込んで扉を閉めた。「でも! でも! 心配したんだよ?」 ロラの顔を見たのは一昨日、店主に事を依頼されて以来となる。確かに、居候の者が丸一日以上帰ってこなければどうしたのかと思うのは道理だ。私でさえ同感である。もし理由が伝わっていないのなら、その不安はさらに増す。 そういった点で言えば後ろめたい気もする。ただ、出会って四日しか経っていないのだ。この私に対して少し大袈裟ではないか、とも思う。 ロラはひとしきり刺し貫くほど私を睨めつけておいて、やがて草のような息をひとつ吐いた。「心配したんだから」「……申し訳ありません」 その言葉に、またむっとして私の額から鼻にかけた辺りを目でむちうつ。私を心配してくれたとして、何に対してなのか。それに、心配された経験がほとんどないのだ。 まだ、その言葉には慣れていない。「まあまあロラさん、その辺で」 長鎗の彼女が宥める風に言うと、その鋭かった感情が次第に溶けていく。そうしてロラはふうと一息入れたあと、木製の肘掛け椅子に背中を押し付けるようにして座った。 弁解するなら、タイミングが悪かったと言うしかない。不在の間にタイミング悪く野盗が来てしまった。いわば不可抗力である。ただそれに対し何か言うでもないし、私はロラの文句に反論する気もない。「理由は聞いたけどさぁ」 今日何度目かの唇の尖り。「だったら尚更騎士様別に悪くないじゃん」「可能性がある限りは仕方ないことなのです」 そうだけどさ。 言ってロラは台所に移動すると、そのまま鍋に火をかけた。指を

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